第一作業場にて墨付け作業を行なう筒井棟梁
A様邸の柱の番付けを行っていました
和室に用いられる化粧柱を
保管している2山分の桧の中から適所に合わせ材を選んでいます

この山には ある文字が記されています
三ム・二ム一上・二ム・一ム一上など
暗号の様に・・・

これは桧の表情を表している言葉です 例えば
「三ム」とは柱の3面が無節(節の無い)ということ
「二ム一上」とは2面が無節で1面が上小節(程度の良い小さい節)
「柾ム」とは柾目(直線の木目)面が無節ということです

趣のある和室の柱に「節」が表れない様
この宝の山から1本1本選定をしていきます

棟梁は 心の中で
「ここに節が出てるけん あんたはこの場所やな」
「かなり綺麗な顔つきやから あんたは一番目立つ所やな」などと
何度もひっくり返しながら会話をして決めるのです

そして選定する際にもう一つ重要なこと
それは柱を立てる方向なのです
山の木は下から上へと水分を吸い上げ成長するので
骨格や細胞のつくりを損なわない様に
家に使用する際も同じ向き「元口は下」「末口は上」にすることは
当然のことなのです

今の時代 機械式加工(プレカット)が主流ですので
木表・木裏などを判断し加工機を通すのは正直業者様任せです
もし 木を「製品・商品」としてしか見ておらず逆方向に使っていたら・・・

(H27:プレカット工場視察)
「木」本来の耐久性や調湿能力が損なわれる可能性があるのです

弊社が今だに伝統工法「墨付け・手刻み」にこだわるのは
その様なことが無いよう1本1本性格を見極め配することが
木造軸組住宅にとって最善の策だと考えるからです

余談ですが 木材の元口(下)と末口(上)は
板目の方向などで判断することもありますが
確実なのは この生き節を見ることです
枝は上へと伸びて成長するので 節の年輪も上向きに。
よって芯が上へずれている方向が末口(上)となります

図面を何度も見比べ 適所に番付けが終わったら
約12.5cmの柱を12cm角に製材 その後
墨付け・手刻みを行ない 最後は鉋(かんな)掛けと磨きを施して
1本の化粧柱が完成です

(参考:大分市S様邸)
この手間暇が「繊細」かつ「きりり」とした和室へと生まれ変わるのです
posted by inouekensetsu at 09:40|
なぜ墨付けにこだわるの?